ondonpiのブログ

山と川の間に迷い込み、掘立小屋で自炊し、猫の額ほどの畑で自給し、大脳と小脳の世界に遊びます・・・

奇跡のリンゴ、杉山修一氏が解けば

奇跡のリンゴで有名な木村秋則氏の言う自然栽培、これの科学的な解説書を、杉山修一氏が著しました
私は自然栽培がどのような作業の過程か、具体的には知りません
またこれに似たものに、福岡正信氏の自然農法、川口由一氏の自然農があり、その違いも分かりませんでした

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[江戸時代]
先ず江戸時代の農業ですが、化学肥料と農薬は勿論無く、堆肥や糞尿で、品種改良は適地選別の積み上げでした
ヨーロッパでも、麦は肥料喰いなので、麦畑の他に、放牧地つまり牛糞などで肥料を補い、休耕地を交え、これを三年で回転させる三圃農業が行われました
 
それが現在、アメリカ発祥の「緑の革命」、化学肥料と農薬と品種改良に依る形に一変しました
これで収量が一挙に数倍、十数倍になり、従来農法は駆逐されます
この特徴は野菜が、大きく形が揃う事です
スーパーで見かける通りです
味も変わり、アクやコクが消えました
そして私見ですが、アトピーやアレルギー、つまり免疫不全症が世界中に広がります
加えて遺伝子組換えが始まりました
これは害虫対策と雑草対策が目的です
野菜にあらかじめ遺伝子操作を施し、農薬耐性を持たせ、しかる後にその農薬をやれば、虫と雑草は死ぬが、野菜だけが生き残ると言うものです
もはやこれは、死の光景ではないでしょうか?
これがアメリカ、カナダ、ブラジルで行われ、はけ口を求めています
 
[福岡正信氏の自然農法]
この緑の革命でアメリカは悪魔の巨大農業国になりましたが、これを批判し「沈黙の春」を著したレイチェルカーソンが現れたのは、大きなアメリカの小さな良心でしょうか
でも彼女の後を追うアメリカ人は居ないようです
日本では福岡正信氏の自然農法が嚆矢でした
無肥料・無農薬・無耕起(不耕起)・無除草(叢生栽培)を唱えました
ただこれは余りにも衝撃的で、何もしない放置農業との区別が分かりません
この農法は、誰にも引き継がれず消えました
私ごとですが、若い時愛媛県に行き、氏に会いました
その横顔と感動、今でも覚えています
 
[川口由一氏の自然農]
川口由一氏の自然農になると、具体性を帯びます
無肥料・無農薬・不耕起迄は同じですが、苗を育て、周辺の草は刈ります
草との距離感が微妙で、この農法の肝です
当人は、虫や草を敵としない、と言います
私はこれを4年間試みましたが、夏場の草対策は鋸鎌だけでは追い付かず、平鍬ではつる糸川式を発見しました
書やネットだけで、実際の手ほどきを受けられなかったのもありますが、私以外にも離れていく人を知っています
極度に労働集約的で家庭菜園規模を越えられず、何か宗教の匂いが漂い、自分で考え、自分で歩けない気がします
 
そして今広がりを見せているのは、有機農業でしょう
無農薬・無化学肥料がスローガンです
有機肥料を施し、耕し、除草します
有機肥料は化学肥料程は虫を呼ばないから、かろうじて無農薬が成り立ちます
 
[有機農法での失敗]
さて本論ですが、木村秋則氏の自然栽培がどう言う物か、以下は杉山修一氏に依ります
木村氏は無農薬の8年間、酢や焼酎を害虫駆除に散布しています
この発想は有機農法であり、木村氏は有機農法でスタートしたのです
有害な化学肥料ではなく有機肥料なら、有害な化学農薬ではなく有機剤散布なら、それなら良いだろうと言う発想は有機農法です
 
[かぐわしい土と自然栽培へ]
それからの転換が、死のうと向かった岩木山で発見した、かぐわしい土でした
同じ土を再現する為、今迄の堆肥をやめ、大豆や麦を植えます
つまり人間が直接土に窒素肥料を与える有機農法ではなく、人間は直接手を下さずその役割を植物に委ね間接的にコントロールします
氏は後日、不完熟堆肥が産む硝酸態窒素でブルーベビー症候群が発生すると言っていますが、これは堆肥さえ拒み、有機農法と袂を分かち、別の世界即ち自然栽培に入った事を意味します
 
[叢生栽培と豊かな動植物相]
木村氏は大豆の根粒菌状態を見、その役目が終わったら、草を刈らず叢生栽培を始めます
同時に、無農薬なので虫を殺さず、無肥料なので害虫を呼ばず、草を刈らないので虫の棲家となり、植物相と昆虫相と微生物相が豊かになり、特定の害虫だけがはびこらないよう環境を誘導します
多様な環境を用意し、生物相の競争・捕食・寄生・相利を豊かにし、一つだけが突出する事を避けます
さあ、慣行農業、有機農法からは遠く離れました
草一本無い裸地こそ美田美畑の篤農家、或いは黒いビニールマルチに覆われて、動植物相は極度に単純化されています
この様な環境は、一つの害虫や病気が一挙に爆発しますが、これは自然が自然に戻そうと努力しているのです
 
[微生物相の窒素産生]
生物相が豊かになれば、微生物相も豊かになります
この微生物こそが、叢生栽培の大量の枯草や動物の死骸を分解して、硝酸イオンとアンモニアイオンに変え、植物に吸収され易い窒素を供給するのです
細かい事ですが、有機物の量もさる事ながら、それを分解する微生物の量と種類により、生産される窒素量が大きく変わります
例えば、有機物どころか化学窒素肥料その物を与えても最初の数年だけで、後は効かなくなる現象があります
これは窒素を自ら食べる微生物や、窒素をガスにして空中に放出する微生物が優位に立ち、野菜に行く窒素は少なくなるからです
化学肥料は、それに対応する微生物相を招き、自然は中和の方向に働いてしまうのです
 
[微生物相を誘導]
微生物相の細かいコントロールが続きます
木村氏の鋭い眼は、微生物に安住しません
植物には成長の早い遅いがあり、成長の速いものは多くの窒素必要とし、遅いものは窒素が少なくても生育できます
すると、植物相は遅いものが最後に勝つ事になります
窒素が少なくても生きて行けるからです
困るのは微生物相がこれに対応し、少ない窒素しか作らない微生物相が優位になり、窒素不足状態になる事です
それを察知したら、人間がこれを壊して撹拌し自然を誘導する事、これが自然栽培の動作です
これ、実は昔から行われています、里山です
放っておけば針葉樹林の暗い林になるので、時折これを切ったり焼いたりして、クヌギやコナラの二次林、つまり里山を維持するのです
自然栽培は里山農法では、と杉山氏は言います
自然栽培は、植物一本ではなく、植物相を栽培しコントロールしているからです
自然を栽培するのが、自然栽培です
 
[コミュニケーションと虫]
植物間のコミュニケーション、植物と虫のコミュニケーションがあると杉山氏は言います
タンニンやニコチンなどは、植物が虫害から守る為の忌棄物質で、虫が来れば産生されます
この時、攻撃された野菜の隣の野菜もタンニンやニコチンを産生し始めるのです
つまり植物はコミュニケーションすると言う事ですが、これが本来の自然状態つまり自然栽培では健全に作動するようになります
攻撃された植物がアルコール物質を放ち、これに隣の植物が反応するのだそうです
同じくこのアルコール物質が、天敵の蜂に救助を呼ぶ作用もあるのだそうです
これが植物が自然状態に置かれると、本来性を発揮するようです
 
[病原菌と自己免疫]
化学肥料をやると、植物は簡単に肥大し弱い体になり病気にかかり易くなり、虫や微生物の格好の的になります
肥料をやらないとその逆に、言うならば固太りの健康体に育ちます、ただ不格好ですが
同じく、植物が本来持っている自己免疫も健全に発揮されます
木村氏が言います、斑点落葉病にかかった葉が、自らその部分だけを切り落とし、葉に穴が空いて自分を守っていると
この現象つまり自己免疫も、有機農法から自然栽培に移行したら発動し始めたと