誕生日
ママが言った、「紗千を幼稚園に、連れてってぇ」
「あれ、幼稚園バスは?」と思ったが、足元に紗千が居た
丸い顔の丸い目、黒く深い目はまっすぐ私を見上げ、挙げた手は短く丸く、抱っこを求めた
私は紗千を背負い、四つん這いでがけ道を進んだ
行く手に岩が垂れ下がり、おんぶでは通れず、腹ばいになり、紗千を背中から下ろした
そこをどう通過したのだろう、私は紗千をおんぶし、原チャリで駅に向かった
いつの間にか紗千は成長し、自分で電車に乗れるようになっていた
その時私は紗千を抱き上げ、抱きしめた
右手を背中に深く深く回し、左手でお尻を支え、強く強く抱きしめた
はらわたを絞るような深い吐息と一緒に、おたけびのような嗚咽を吐いた
両目からは涙が、ほとばしり出た
もう一度はらわたが絞り上がり、二度目の嗚咽を吐いたとき、目が覚めた
神様は何と、むごい事をなさる・・・
ありがとう、ありがとう・・・