ondonpiのブログ

山と川の間に迷い込み、掘立小屋で自炊し、猫の額ほどの畑で自給し、大脳と小脳の世界に遊びます・・・

蔵の大掃除、100年ぶり

母のアルツハイマーで、その看護もあるが、家の事も覆いかぶさって来た
去年の夏から大掃除をしている
上座敷、下座敷、広間、そして離れ、全部で十日間くらいホコリにまみれて働き、泥のように疲れた
一体何十年ぶりだったのだろう、この掃除
廃棄物の山、有料のリサイクルセンターに持ち込んだ鉄屑だけでも、段ボール6箱あった
燃えるものは、十回ほど焼いた
消防署から注意された
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家を掃除すると、蔵にしまうべき物も当然出てくる
その時俄然気が付いた、納屋と蔵の掃除もやらなくてはならない!
その仕事量、一瞬めまいを覚えた
今年の春はこれに掛かり、もう十日を過ぎた
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[造り]
ただ蔵掃除は、家掃除とまるで違う
と言うのは、この蔵はその掃除、先々代以来百年ぶりくらいの筈なのだ
その間、色んな物が放り込まれ、屑博物館(?)になっていた
色々な事を考えさせられた
その一つ二つを記してみたい


まず造りだが、蔵そのものは2階建ての漆喰壁だ
言う迄もないが、屋根は空気抜けの二重屋根になっている
漆喰も二重屋根も勿論、夏でも高温にならないよう、先人の知恵だ


で、入口部分に平屋の部屋が付属する珍しい構造になっていて、ここは泥壁と一部モルタル壁だ
つまり、漆喰は最上だが高価、という当たり前の事を知る
時代劇などで、漆喰作りの家やなまこ壁の塀が続くなどは、有り得ないことだと分かる
同じく泥といい漆喰といい間壁だが、今日の建築法からは消えた


[漬物]
この入口部屋は、漬物に使われていた
驚きの一番目
直径60cm程のプラスチックの漬物樽8個あって、半分は内容物があった
勿論表面は黒や白のカビに分厚く覆われ、吐き気をもよおす
これを捨てる場所は、塩を大量に含んでいるから熟考が必要
捨ててびっくりしたのは、胡瓜や大根だったが、はっきりと原形を留め腐っていないことだった
さすがに食べはしなかったが、かじるくらいはしても良かったと反省している


驚きの二番目
この大量の漬物、何の為か?
勿論長い冬の為だ
今でこそ世界第三の経済大国だが、我が父母はこの漬物、塩の結晶と言ってもいい、これで飢えを凌いでいた
それはわずか数十年前の事だった
漬物ブーム、反対はしないしおいしいのも知っているが、おもちゃだ
生きるか死ぬかから、遥かに遠い


驚きの三番目
木樽があった、高さ120cm位、直経60cm位
内側に干からびた味噌のような物、厚さ10cmほどがへばり付いていた
勿論こそげ落とし、水を満たして半日、ブラシで洗ったらあっさり落ちた
この木樽に限らず、漬物は水だけであっさり落ちるので、呆気にとられた
醗酵菌の力だろうか
驚きはその後に来た
その木樽、底に1950年1月新調、と墨書きされていた事だった
その樽、材も肌も新品同様、七十年前が未だに信じられない
しかも酷使されていたのに・・・


驚きの四番目
勿論瓷(かめ)もあった、小ぶりの瓷6つ
中身が分からず、捨てたら梅干しが出てきた
これも味見すれば良かったと、後悔
ただ洗って眺めれば、これらの瓷、美しいのだ
茶色で、上の横に黒のうわ薬、それが垂れる様、単純だが何とも美しい
千利休かと思う、この年になって壺が美しいなんて、聞いてはいたが本当だとは知らなかった
いや、生きていて良かった、とさえ思う
うっとりする
六つ目の瓷は、最近の工場生産だとひと目で分かった、嫌だ、本当に醜い


[蔵の本丸]
驚きの一番目
深沓があった、雪沓、藁沓とも言う、これで雪を歩く
これがあったなんて、瞬時に雪の子にタイムスリップする
藁で編んだ脛当て、ゲートル、スパッツのたぐい、これもあった、
蓑が無かったのは返って意外だった、腐りやすいのだろうか
農作業に使う、蔓で編んだ篩(ふるい)、
竹で編んだ手箕、
蓆(むしろ)で作った肩掛け袋、ショルダーバッグ・・・
知らない物もあった


驚きの二番目
鞍が一式、完全な形で出てきた
家には昔、馬がいた
その鞍が、ハミと手綱、鐙(あぶみ)等と一緒に完全な姿で出てきた
革の長靴や、飯盒まで出てきた
子供の頃父に、馬に乗せてもらったことを思う
勿論ベルトは劣化し、曲げるとヒビが入る


驚きの三番目
と言うか、笑ってしまったのが、暖房器具だった
全部揃って、博物館状態だった
先ず火鉢、70cmの茶の間用大火鉢、30cmの一人用、もっと小さい物、はたまた机状の横長の物(名前は忘れた)、これまで揃っていた
次は練炭、豆炭の時代だ
これを七輪のような器具に入れて、暖を取る
面白かったのは、大火鉢そっくりの形状の物を造り、その中にこの豆炭を格納する物があった事だ
人間の知恵は、そして生活と文化は、1mmづつしか進まない
更に呆れるのは、灯油になっても、その燃焼部分を火鉢の中に格納するストーブがあった事だ
それを経てようやく、スタンド型の灯油ストーブが現れた、これもあった
そして現在は、灯油ファンヒーターだ
テレビで細川護煕氏が、うちは捨てないうちなんです、と言っていた
さもあろう、鎌倉時代室町幕府以来のものがびっしりあるに違いない
それらの一つ一つが、語る筈だ