ondonpiのブログ

山と川の間に迷い込み、掘立小屋で自炊し、猫の額ほどの畑で自給し、大脳と小脳の世界に遊びます・・・

フリーランスと成熟社会

若い人と話すのは、いい
フリーランスという言葉は、衝撃だった
今みんなそうですよ、と

昔のアルバイトは金の為、職種は選べない、という雰囲気がある
次に現れたパートタイマーは、軽作業のイメージ、時間が選べる感じだろうか
少し良くなった
 
フリーランスはガラリと違う
働く時間も日にちも自由、よくそれで食べていけるかと驚く
また働きと対価は、契約で成立し、自身は自分の社長であり、納税は確定申告する
知らなかった・・・、夢のようだ
日本はいつからこんな豊かになったのだろう?

そう思っていたら最近、外国人の、観光客ではなく労働者が、めっきり多くなったのに気が付いた

建築現場には必ず黒人数名、インド料理はインド人、中古工具店やケバブスタンドの経営者はイラン人だった
インドシナ人は目立たないが、毎日のスーパーで四声五声のトーン言語が飛び交う
多いのだ・・・夢のようだ
日本はいつからこんな、豊かになったのだろう?
 
さてこの感覚、デジャブ感がある
昔のヨーロッパと同じだ、と気が付いた
公園では老人が日がな一日、日光浴していた
国民は、バカンスを謳歌している
肉体労働者は、旧植民地や東欧やアラブから来た
豊かさとは何か、それ以来、考える力もないのに、頭にまとわりついて離れない
 
[涙の涙]
戦中戦後の生活や貧しさ、そこから来る涙と涙、ご存知だろうか?
あの時の貧乏は、生きるか死ぬかだった
夜明け前から野良に出、粗末な朝昼晩の飯を挟み、夜なべ仕事に及んだ
泥のように働いた
これだけやっても、給料は無かった!
年に一度の米代金、これだけだった
時給などという概念は、生まれる筈も無かった
その米代金だが、恐ろしい事に、一年間ツケで生活しているから、それの支払いできれいに消え、翌月からまた借金生活の一年が始まる
どうだろう、何の夢、何の希望があったろうか?
爪に火をともし貯めた小銭で子供の着物が、正月に買えたら御の字だった
親の仕事着はツギハギだらけだった
悲しいのは病気だった
医者は呼べなかった
死ぬ前に何か食べたい物はと聞かれ、バナナと答えて死んだ
 
こんな極貧、なぜ逃げないかと思うだろうか?
どこへ逃げるのだ?
逃げてもそこで、よそ者に職はなかった
嫁入り婿入りの、意味は分かるだろうか?
これはその家に入り、そこで田畑があるから、生きていける、そういう意味だ
婿や嫁に行けなければ、厄介叔父、行かず後家として、長男の下で下男下女の道が待っていた
或は奉公という名の、人身売買だった
更には、最初に間引きをした
これが日本だったと、ご存知だろうか?
 
[奇跡の戦後復興]
そんな戦後の田舎にある日、ホンダのスーパーカブが現れた
見たこともない文明が、ピッカピカに光っていた
次は、乗用車が来た
子供たちは、後を追いかけ走り、排気ガスを吸って笑った
あれを吸えば頭が良くなる、と
 
町に会社が、雨後の筍のように生まれたのだ
大人が会社に行くようになった
月々の、現金収入を手にしたのだ
後は猛烈な勢いで、世の中は爆進した
次男三男も会社で、生きていけるようになった
若夫婦は家を建て別居し、姑の嫁いびりは永久解決した
女は結婚しなくても、生きていけるようになった
戦後強くなったのは女と靴下、これが理由だった
勿論、間引きも、身売りも消えた
高額高等な医療も、当たり前になった
貧乏と涙は霧のように、消えた
人は、みな忘れ、有頂天になり、最初から無かったと思っている
 
[高度経済成長、評論家]
この高度経済成長、日本を貧しさから救ってくれた
ただこれは誠に、不思議な現象だった
先ず戦勝国ではなく敗戦国の、ドイツと日本で起きている事だ
評論家は勤勉な国民性と言ったが、後付けもいいとこ、何も知らず、何も分かっていない
 
次に評論家は、朝鮮戦争特需を言う
それはあったろうが、終戦直後から30年も持続した理由にはならない
そもそも政府統計によれば、特需の筈なのにこの時期、税収は増加していないのにびっくりする、数字は嘘をつかない
 
もっと無知な評論家は言う、日本は明治以来、元々力のある国なのダ、当然なのダ、と
 
多少頷ける意見に、戦後東アジアが共産化し、米国は日本を防波堤とすべく、占領政策を変えた、というものがある
ただこれは、復興に寄与はしたが、興した理由にはならない
 
[高度経済成長、縦社会崩壊]
私は分からなくなった・・・
誰も教えてくれない
そして数十年たったつい最近、冒頭の貧乏、
これがきっかけとなり、一気に展開した
貧乏を抜け出し始めたのは、親が会社に行き、現金収入を得たからだった
その会社、戦後雨後の筍のように増えた、地方の田舎町にも出来た、これは私も知っている
ではその会社、戦前は無かったのに、なぜ戦後に爆発的に生まれたのか?
 
私は愚かだった、財閥解体は知っていた、農地開放も知っていた
ただそれは、言葉だけだった
進駐軍の目的は二度と、日本が戦争を起こさないようにし且つ、その仕掛けを構築する事だった
それで日本を武装解除し、軍隊を消滅し、平和憲法を作らせた
 
次に、政治を戦争に向かわせた根幹である財閥、これを解体する事だった
それは知っていたが、現象は知らなかった
枝葉を払えば政財界の偉い人たちを、皆々追放し、裁判にかけ、投獄し、死刑にした
極東裁判も、レッドパージも、巣鴨プリズンも、財閥は勿論、それ以下の企業でも、上がスッカラカンになったのだ!
東京私鉄の今は有名な、当時はペーペーのある社長が言ったという、上が皆居なくなった、よその会社も一斉に居なくなった、青天井が見えた、と
若社長たちは完全に自由になり、完全にフリーハンドを得たのだ
 
同じ事は田舎でも起きた、農地開放だ
これは最初、地主は土地を小作人に売りなさい、適正価格で、というお触れだった
お分かりか、買えるくらいなら誰が小作人などやるか、買えないから小作なのだ
事実土地は動かなかった
が、その後起きた大インフレ、300倍のインフレで、土地がただ同然になり、土地が一挙に動いた
それは知っていたが、その時の心情までは分からなかった
つまり、縦社会が崩壊したのだ
地主には決して逆えない
地主の風呂の焚き付けは、小作人の子供の無料奉仕だった
地主の息子は大学に行っても、小作人の子供の運命は決まりきっていた
これが一挙に崩れた、地主はもう偉くなかった
ここでも、青天井が見えた、自由になった
これが地主を差し置いて、平民でも会社が興せるようになった、縦社会崩壊の精神世界だ
 
さて理屈を言えば上のようになるが、庶民はもっと端的に直感的に自由を感じた
マッカーサー、だった
厚木の飛行場、そのタラップを降りる、コーンパイプとサングラス
カッコよかった、今までの霧が一瞬に晴れた
これからはこの世の中になるのだ、と直感し確信した
日本陸軍のカーキ色の軍服とゲートル、土方みたいだった、カッコ悪かった・・・
カラスは白いと云われ、ハイそうであります上官殿・・・
もうウンザリだ、と
 
[高度経済成長、他の要因]
付随的な事も、押さえておきたい
会社を興すには勿論資金が要る
これを手当した銀行が何故どうして、潤沢な金を、平民に提供できたのか分からない
これから勉強するが、結果としては、戦後の銀行は誠に良く機能した
 
次に会社を興して物を作っても売れなければ困る
これは簡単だ、欲しがりません勝つ迄はと、長い我慢を強いられたから、終戦と同時に爆発した
闇市など、禁止しても取り締まっても、何の効果もなかった
会社は何を作っても売れに売れ、購買は爆発した
 
技術のキャッチアップも、大きな因子だ
日本は発想力は無いが、物真似は上手だと
その真似だが、アメリカの特許を買ったのだ、アメリカの言い値で
中国とはここの所が違う、中国に外資が入れば即、合弁会社が組まれ、技術や経営や金融のノウハウを盗まれる
またもう一つ、キャッチアップは追いついた時が、当然ながら終わりの時になる
 
[高度経済成長、近代化の前提]
勿論この高度経済成長は、前提とする段階がある
明治から太平洋戦争迄の、近代化だ
ヨーロッパの最後尾にかろうじて飛び付き、間に合った
このレベルで停滞したのが、旧共産圏だろうか
日本での現実は財閥の専横と、金融が財閥内でしか機能せず、殆どの人々は貧しさに置かれた
否それどころか、上述のように極貧に突き落とされた面さえある
現に百姓一揆は江戸時代より、明治の方が多い
この現象は日本だけでなく、ヨーロッパの産業革命後も同じでなかったろうか
労働者の悲惨な状況は、よく伝わっている
後進国で現れる、開発独裁もこのパターン
何よりも、明治政府の富国強兵が、開発独裁だった
この時代の資本主義、その共通点は強力で強大な独占だろう、競争が殆んど見られない
労働者に対しても、天地の力の差があった
高度経済成長に引き継がれのは、経営、技術、金融のノウハウだったろう
 
[高度経済成長、自給自足]
さて以上の事は時間をかけて理解できた事柄だったが、これからが私が気付いた事柄だ
農家は事実上、自給自足していた
自給できないものは、わずかな衣料だけで、事実上殆んど経済の枠外に居た
つまり、当時の人口比率は知らないが例えば、2割の都市労働者と、8割の農民だとすれば、2割だけが経済に加わり、残り8割は経済的には事実上存在しなかったのだ
この8割から1割づつが、毎年都会に出てくる
夜行列車での集団就職だったし、中卒は金の卵と言われたし、民族大移動と言われた
これが、これこそが、奇跡の戦後復興、高度経済成長では無かったか?
中国でも同じ、広大な中国大陸の隅々から、農民工が沿海部に、毎年陸続と集まった
だから年率10%、15%という、驚異的な数字が踊るし、日本でも当時の所得倍増は7年で達成した
 
異論が出ると思うから、言う
GDPは金銭の授受がない自給自足でも、カウントされるのは知っている
ただ昔の農業は、広い田圃を鍬で耕すという、誠に生産性の低い方法だった
この人口が、生産性の極めて高い工業生産、工場生産に移動した、と私は言っている
事実上の経済人口の増加だと、言っている
倍の人口が働けば、GDPも倍になる
 
もう一つ、この人口GDP説は藻谷浩介氏と同じ、と言う批判だろう
彼は日本の停滞をこれで、演繹しようとした
だから叩かれたのだ
上の中国だけでなく、実はアメリカも、不法移民も含めて、その繁栄の持続の一端はこれにある
同じく昨今のドイツも、そうだった
トルコや東欧からの安い労働力が、ドイツ製品の価格となり、国際競争力の源泉となっている
 
[高度経済成長、教育]
もう一つ、これに絡んで、永らく私を悩ませたエニグマが解けた
教育だ
一番意地の悪い説は、Social  Stratificationだろう
昔は士農工商で身分が決まったが、今は教育を受け大学を出て、社会的な身分が決まる
つまり格差の再生産装置だ、というものだ
評論家らしく、不毛な考えだ
 
江戸時代は儒教暗記が、教育だった
これなど、私にはさっぱり分からない
更に昔は、読み書きそろばんだった
これは分かる、今の理工学部と同じ、実利実益だ
そして近年は、誰でも彼でも、個性個性、個性を生かす伸ばす、これが最先端の流行らしい
 
これらの矛盾や不明が、上の高度経済成長や集団就職を考えていたら、一挙に見えてきた
先ず教育とは優秀な人材を作る、これが目的と言われる、勿論だ
ただ私に言わせれば、優秀な人材など作れるものではない
優秀な人材は居るのだが、地主の風呂焚きに埋もれ、百姓に埋もれるのだ
これを一挙に一列に自由市場に晒す工夫、これが学校であり教育だと考えたい
 
そしてもう一つ、教育の重大な機能、そう、文句を言わず従順に従う人間の、大量生産工場だと気が付いた
そう思えば、くだらぬ儒教暗記もスラリと納得できる
あの宗教は、従う事だけを教えている
これも、会社に大量に必要な人材なのだ
別に悪意はない、生産性には、頭脳と手足の分離が不可欠だし、皆に経営者の能力がある訳ではない、言われるままの責任無しも、気楽でいい
だから、個性的教育を喧伝する知識人には、偉いね良く知ってるね、と褒めておけばいい
 
蛇足だが、アフリカやアラブ、近代化に失敗している国々は、この教育環境、教育要因が大きいと思う
その意味で、日本は不思議な国だ
昔から教育や識字率が、地球上のどの地域より、歴史的に高かった
 
[成熟社会]
高度経済成長後の、且つバブル崩壊後の、成熟社会が出現した
これの至る理由は分からないが、現実の成熟社会は、欧米と日本だけではないだろうか
中国も韓国も経済成長の渦中であり、成熟社会には見えない
 
この成熟社会、成長の果ての失敗や頓挫が必要らしい
日本ではバブル崩壊、ヨーロッパのそれは、第一次と第二次世界大戦の苦渋だったのでは、と思う
何となく飽和や停滞が漂い、人は満ち足り、欲しいものがない
成長真っ只中の国や国民を、愚かしく愛らしく、自分もそうだった・・・、と懐かしく目を細める
 
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フリーランスの青年に、気負いはない
明治にあった、立身出世やら、青雲の志やら、故郷に錦やら、もう無い